原産地規則について(5)。

原産地規則について

 

本記事のテーマ

「付加価値基準」について深掘り。

 

 

 「付加価値基準とは、産品を構成する材料の原産国が明らかでない場合において、その産品のうち”原産性があると認められる部分(原産資格)”を価格換算し、その価格割合が一定の基準を超えた場合に、その産品を、当該締約国を原産国と認める基準のこと。」

 

 

原産資格算出の計算式
  • 主に以下2つの方法による。

 

  1. 控除方式
  2. 積み上げ方式

 

控除方式とは
  • 製品価格から非原産材料費を引いて算出した原産材料費が、製品価格に対し、どれだけの割合を占めているかを確認するもの。

 

  1. "非原産材料"を特定する
  2. "製品価格"から"非原産材料費"を引き、"原産材料費"を算出する
  3. "製品価格"に対する"原産材料費"の割合を算出
  4. 算出された割合が、各EPA協定で定められた原産品割合を超えていれば、原産資格を得ることができる!

 

(計算式)

原産資格割合=(製品価格(FOB) - 非原産材料費(CIF))/ 製品価格(FOB)x100%

 

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控除方式

 

例:日・タイ経済連携協定 付属書2「品目別規則」 (p24)
 1. 第2208.70号の産品への他の項の材料からの変更(第22.07項の材料からの変更を除く)
  又は、

 2. 原産資格割合が40%以上であること(第2208.70号の産品への関税分類の変更を必要としない)

 

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(ポイント)

求められる裏付け資料
  • 非原産材料単価の算出根拠資料(帳簿、伝票、インボイス、契約書、請求書等)

 

積み上げ方式とは
  • 原産部分(原産材料価額+生産コスト(労務費・製造経費)+利益等)を積上げた額の、製品価格に対する割合を算出する方法。
  • EPA協定で定められている原産割合を超えるまで足し続ける。

 

 (計算式)

原産資格割合=(原産材料費+生産コスト+輸送コスト+利益)/ 製品価格(FOB)x100%

 

(ポイント)

・求められる裏付け資料
  1. 製造原価計算
  2. 積み上げるべき原産材料単価、生産コスト等の算出根拠資料
  (帳簿、伝票、インボイス、契約書、請求書、支払記録等)

・”控除方式”の方が主流

 FOBではなくEXW価額による日スイスEPAは、積み上げ方式が該当する。 

 

(なぜ日スイスEPAは”EXW価額”による?)

FOB を採用した場合、工場から輸出港までの輸送費が付加価値計算に含まれる。

つまり、国土が広大な国においては、工場の立地によって、同じ生産工程を経た製品であっても、原産性判断が輸出港までの距離の遠近によって左右されてしまう。

それでは不適当だ!という主張を反映しているのかも。

 

 

用語
原産資格割合(協定上の付加価値)が何パーセント以上有れば原産品であるかを決定する基準となる割合
  • QVC:Qualifying Value Content(原産資格割合
  • VA:Value Added(付加価値基準、VAルール)
  • VNM:Value of Non-originating Materials(非原産材料価額)

 

 

まとめ
  • 製品価格に対する原産材料費が、各EPA協定で定める原産資格割合を超えていれば、その産品は原産資格を得ることができる、とする基準を「付加価値基準」という。
  • 付加価値基準の計算方法は大きく2つ-「控除方式」と「積み上げ方式」。
  • 原産資格割合は、各EPA協定の品目別規則 付属書2 を参照。

 

 

参考資料

原産性を判断するための基本的考え方:経済産業省

付加価値基準:ジェトロ

付加価値基準:JASTPRO

 

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