原産地規則について(4)。

実質的変更基準の例外

 

本記事のテーマ

実質的変更基準の例外」を理解しよう。

 

 

「実質的変更基準の例外」とは、原産地判定に用いられる"実質的変更基準"を満たすことができず原産国と認められない産品に対し、救済的な規定を以て、原産国と認めるとする規則のこと。

 

 

EPA特恵税率を適用するには

特定の国以外の産品が使用されている場合には、「実質的変更基準」を満たさなければ、特定の国の原産品であることが認めらず、EPA税率を適用することができない。

しかし、実質的変更基準を満たすことができない産品に対して、”救済的な規定”が設けられており、この規定を満たすことで原産国と認められ、EPA税率を適用することができる。

ここでは、救世主的な存在、「実質的変更基準の例外」とは何か、を理解します。

 

 

■実質的変更基準の例外とは

救済的な規定は大きく3つ存在する。

 

  1. 累積(ACU:Accumulation)【EPA
  2. 僅少の非原産材料(DMI:De Minimis)【EPA,GSP】
  3. 自国関与基準【GSP】

 

 

累積(ACU:Accumulation)【EPA】とは
  • 他方の締約国(日本)の原産品を、自国の原産材料とみなすことができるとするもの。
  • 原産地証明書には「ACU」と記載。

 

↓ 例:日ベトナムEPA、革靴を輸入する場合

  • 6404.59(革靴)の品目別規則は、CC(類(HS 2桁)変更)と規定。
  • 革靴を構成する部分品は、”日本”の本底6406 のみ、品目別規則を満たしていない。
  • そのため実質的変更基準によれば、当該革靴はベトナムを原産国として認めることができない。
  • しかし、「累積」の規定により、他方の締約国(=日本)は自国(=ベトナム)の原産材料とみなすことができるので、当該革靴は、ベトナムの原産品として認められる!

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累積

 

■僅少の非原産材料(DMI:De Minimis)【EPA,GSP】
  • 関税分類変更基準を満たさない非原産材料があっても、それがごく僅かなものであれば、それを考慮しないとするもの。
  • EPAにより、品目・割合は異なる。
  • 一部協定(日インド協定等)では、加工工程基準にも適用されている。
  • 原産地証明書には「DMI」と記載。

 

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DMI

参照:日アセアン 品目別規則 付属書2(p2

第一八〇三・一〇号、第一八〇三・二〇号及び第一八〇五・〇〇号の各号に分類される産品については、当該産品の生産に使用された非原産材料(必要なCTCが行われていないものに限る。)の総額が、当該産品のFOBの十パーセント以下の場合。

 

(GSPの場合)

  1. 対象品目は50-63類に分類されるもののみ。
  2. 重量の10%以下であれば適用可能。
  3. 原産地証明書への”DMI”の記載は不要。

 

自国関与基準【GSP】
  • 日本から輸出された材料は、特恵受益国等の原産材料とみなすとするもの。
  • 一部除外品目あり。

 

(ポイント)

  1. 日本から輸出された材料であること(日本原産品でなくても可!)。
  2. ANNEX が必要(生産に使用された日本からの輸入原料に関する証明書。現地で発給)
  3. 原産地証明書への”ACU”の記載は不要。
  4. 一部除外品目あり(革製の鞄類、革製の履物、人形・おもちゃ等)。

 

まとめ
  • 実質的変更基準を満たすことができない産品に対する、”救済的な規定”=”実質的変更基準の例外”
  • この規定を満たすことで、当該締約国の原産地として認められ、EPA税率を適用することができる。
  • 「実質的変更基準の例外」は、1.累積(ACU)、2.僅少の非原産材料(DMI)、3.自国関与品 の3つに大別される。
  • 規定については、各協定の品目別規則 付属書2 を参照。

 

 

参考資料

経済連携協定の原産地規則:ジェトロ

原産地規則とは:税関

実質的変更基準の例外:税関

 

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