食品輸入のモニタリング検査とは?
食品を海外から日本へ輸入していると、輸入届出をした際に「モニタリング検査」の対象になることがあります。
初めて経験すると、
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何のための検査なのか
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輸入者は何をすればよいのか
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貨物は出荷してよいのか
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検査にはどのくらい時間がかかるのか
など、意外と分からないことが多いものです。
私自身、食品輸入の実務担当者としてモニタリング検査を経験したことがあります。
この記事では、厚生労働省の制度上の位置付けを確認したうえで、
実際に輸入者として対応した経験も交えながら、モニタリング検査の流れと実務上の注意点を整理します。
1.そもそもモニタリング検査とは?
モニタリング検査とは、厚生労働省が年間計画に基づいて実施する、輸入食品の行政検査です。
厚生労働省は、モニタリング検査について、
多種多様な輸入食品等について、食品衛生上の状況を幅広く監視し、必要に応じて輸入時検査を強化する等の対策を講じること
を目的としていると説明しています。
つまり、単純に「今回輸入した商品が合格か不合格かを判定するためだけの検査」ではありません。
日本に入ってくる食品について、
「実際にどのような食品が、どの程度の衛生状態で輸入されているのか」
を幅広く確認し、その結果を今後の輸入食品監視に活用するための検査です。
令和8年度(2026年度)は、モニタリング検査を約10万件実施する計画となっており、
検査対象には、残留農薬、抗菌性物質、添加物、病原微生物、カビ毒、遺伝子組換え食品、放射線照射など、さまざまな項目が含まれます。
2.モニタリング検査と「検査命令」は別物
食品輸入時の検査にはいくつか種類がありますが、特に混同しやすいのが、
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モニタリング検査
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検査命令
-
自主検査(指導検査)
です。
| モニタリング検査 | 検査命令 | 自主検査(指導検査) | |
|---|---|---|---|
| 主体 | 国 | 輸入者 | 輸入者 |
| 主な目的 | 幅広い監視 | 違反の可能性が高い食品の確認 | 輸入者自身の衛生管理 |
| 根拠 | 年間計画等 | 食品衛生法 | 輸入者への指導 |
| 費用 | 国 | 輸入者 | 輸入者 |
| 結果判明前の輸入 | 可能 | 原則不可 | 検査内容による |
| 対象 | 幅広い | リスクが高い食品等 | 初回輸入・定期確認等 |
厚生労働省も、モニタリング検査については検査結果の判明を待たずに輸入することができると明確に説明しています。
これは後述する実務対応を考えるうえで重要なポイントです。
3.モニタリング検査はどのように選ばれる?
モニタリング検査は、厚生労働省が毎年度策定する「輸入食品監視指導計画」に基づき、検疫所が実施します。
主に、
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輸入件数
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輸入重量
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過去の違反率
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違反内容の危害度
などを考慮し、食品群・検査項目ごとに検査数が設定されています。
また、年度途中でもモニタリング検査の結果や監視指導結果を踏まえ、検査項目等の見直しや検査強化が検討されます。
そのため、
「一度検査された商品だから、今後は絶対に検査されない」
という制度ではありません。
4.実際の流れ① 食品輸入届出を行う
まず通常どおり、輸入者(または通関業者)が食品等輸入届出を行います。
検疫所では、輸入届出の内容を確認し、食品衛生法への適合性を審査します。
その中でモニタリング検査の対象となった場合、検疫所から輸入者側へ検査について連絡があります。
私が経験したケースでも、通常の食品届出を行った後、通関業者を通じてモニタリング検査について連絡を受けました。
ここで初めて、
「今回の貨物が検査対象になった」
ことを認識します。
5.実際の流れ② 検査内容を確認する
モニタリング検査を実施することになると、検査対象となる貨物や検査項目等について連絡があります。
私の経験では、通関業者を経由して検査に関する書類・情報を受け取り、
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どの商品が対象なのか
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どの貨物を確認するのか
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検体を採取するのか
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現物確認のみなのか
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どのような検査を予定しているのか
などを確認しました。
ここで重要なのは、
「どの貨物・どの商品が検査対象なのか」を明確にしておくこと
です。
特に同一コンテナに複数商品が混載されている場合は、
対象商品を確認したうえで、倉庫側へ適切な指示を出すことが重要です。
6.実際の流れ③ 現場確認の日程を調整する
モニタリング検査では、検疫所の食品衛生監視員が貨物の保管場所等に赴き、現物確認や検体採取を行います。
したがって、次に必要になるのが、
「いつ、どこで、誰が立ち会うか」
の調整です。
私の経験では、通関業者を介して検疫所と倉庫側の日程を調整しました。
ここで輸入担当者として確認しておきたいのは、
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倉庫の所在地
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貨物の入庫予定日
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貨物の保管場所
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倉庫側の担当者
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食品衛生監視員が到着した際の案内方法
-
対象貨物をすぐ確認できる状態になっているか
などです。
「検査の日程だけ決めれば終わり」ではなく、
当日に食品衛生監視員が迷わず対象貨物へたどり着ける状態を作ることが大切です。
7.現場確認では何が行われる?
当日は、検疫所の食品衛生監視員が貨物の保管現場に来ます。
検査内容によりますが、例えば、
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輸入届出の内容と現物が一致しているか
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商品・包装等の状態
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対象貨物の確認
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検体の採取
などが行われます。
検体を採取する場合、食品衛生法に基づく「収去」が行われます。
(モニタリング検査は検疫所でサンプリングを行い、必要な検査機関で分析する仕組みです。)
8.「収去」とは?
現場では「サンプルを取られる」「検体を引き抜かれる」などと表現することがあります。
正式には、「検体を収去する」と表現され、
検査に必要な数量の食品がサンプルとして採取されます。
私の経験では、現場で食品衛生監視員から、
「この商品を○個収去します」
という形で対象を確認しました。
また、後日、収去された数量等について書類で確認できるため(収去証)、
実際に何個の商品が検査対象として持ち出されたのか
を社内記録として残しておくとよいでしょう。
9.検査中の貨物はどうする?
大前提として、
モニタリング検査だから、検査結果が出るまで絶対に出荷できない、という制度ではありません。
厚生労働省は、
モニタリング検査は、検査結果の判明を待たずに輸入することができる
としています。
したがって、
「モニタリング検査=検査終了まで貨物を流通させてはいけない」
という意味ではありません。
ただし、実際の検査現場では、
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現物確認を行う
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検体を採取する
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検査対象貨物を保全する
といった作業があります。
そのため、少なくとも現場確認・検体採取が完了するまでは、対象貨物を勝手に開梱・移動・出荷しないことが重要です。
私が経験した案件では、検査対象の商品について、厚労省からの指示に基づいて、現場確認から検査終了まで貨物をそのまま保管しました。
これは私の経験した案件における対応であり、
すべてのモニタリング検査で、検査結果が出るまで出荷禁止になるという意味ではありません。
実際の貨物について出荷制限等の指示がある場合は、検疫所の指示を優先しましょう。
10.倉庫担当者には何を伝えておけばいい?
実務上は、検疫所との調整だけでなく、倉庫側への指示が重要です。
例えば、次のような情報を共有しておきます。
検査対象貨物について倉庫へ伝えること
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モニタリング検査対象であること
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検疫所の食品衛生監視員が来る予定であること
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対象貨物の保管場所
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現場確認まで対象貨物を勝手に移動・開梱しないこと
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検体採取の可能性があること
-
検疫所から別途指示があった場合は、その指示に従うこと
特に、輸入担当者が倉庫に常駐していない場合、
「倉庫の人が検査対象だと知らずに出荷してしまった」
という事態は避けなければなりません。
11.検査にはどのくらい時間がかかる?
これは検査項目によって異なります。
検査内容によって必要な分析方法や検査期間が違うため、
「モニタリング検査は○日で終わる」
という一律のルールはありません。
検査期間の目安は検疫所(または通関業者)から案内されることが一般的かと思いますが、必要時は確認を入れてみましょう。
参考までに、私が経験した案件では、現場確認・検体採取から結果が出るまで、1週間程度でした。
12.収去された商品はどうなる?
実は、検査のために収去された商品について、
「検査が終わったら必ず返却される」
とは限りません。
商品の性質や検査内容等によって、返却・廃棄などの取扱いが異なる可能性があります。
気になる場合は、事前に確認しておくことをおすすめします。
13.検査結果が出たらどうなる?
モニタリング検査では、検査結果が出るまで輸入そのものを待つ必要はありません。
ただし、検査結果が食品衛生法違反だった場合には話が変わります。
厚生労働省は、モニタリング検査で違反が判明した場合、輸入者が速やかに回収等の措置を講じる必要があるとしており、
違反の発生状況等によっては、同一食品等について検査が強化されたり、検査命令の対象となる可能性があります。
つまり、モニタリング検査は、
「今回の貨物を合格にするためだけの検査」ではなく、その後の輸入食品監視にもつながっている
ということです。
14.一度検査された商品は、次回以降どうなる?
結論から言えば、
一度モニタリング検査を受けたからといって、次回以降の検査対象から永久に外れるわけではありません。
モニタリング検査は年間計画に基づいて実施されますが、検査結果や輸入動向、違反状況等を踏まえて、年度途中でも検査項目等の見直しや強化が行われます。
そのため、
「前回検査したから今回は絶対に検査されない」
とは考えない方がよいでしょう。
一方で、継続輸入している商品について、過去に検査を受けて問題がなかったのであれば、その事実は輸入者として把握しておく価値があります。
15.過去の検査結果を持っている場合は?
例えば、同じ商品について過去にモニタリング検査を受け、
「問題なし」
という結果が出ているとします。
その場合、次回も検査対象になったからといって、
「前回問題なかったので検査を拒否できます」
という制度ではありません。
ただし、
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過去の検査結果
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検査成績書
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商品情報
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製造者情報
-
継続輸入の実績
などを整理しておき、必要に応じて検疫所に相談することはできると聞きます。
ここで大切なのは、
「検査免除を要求する」のではなく、「過去の検査実績を情報として提示し、検疫所に相談する」
という姿勢です。
16.モニタリング検査対応チェックリスト
① 検査対象の確認
□ 商品名
□ 輸入届出番号
□ コンテナ番号・貨物番号
□ ロット
□ 数量
□ 保管場所
□ 検査項目
□ 現物確認のみか、検体採取を伴うか
② スケジュール確認
□ 貨物の入庫予定日
□ 現場確認予定日
□ 出荷予定日
□ 次回入荷予定
□ 倉庫の立会可能時間
③ 倉庫への連絡
□ 検査対象貨物であることを共有
□ 対象貨物の場所を共有
□ 現場確認まで勝手に移動・開梱しないよう依頼
□ 食品衛生監視員の来訪予定を共有
④ 検体採取がある場合
□ 何の商品を採取するか
□ 何個程度採取するか
□ 収去数量を記録
□ 収去証等の書類を保管
□ 収去品の返却・廃棄等の取扱いを確認
⑤ 検査後
□ 検査結果を確認
□ 検査結果を社内保管
□ 問題がなかった場合、その実績を記録
□ 違反の場合は検疫所の指示に従う
□ 継続輸入品なら次回以降の検査可能性も把握
17.モニタリング検査って結局?
初めてモニタリング検査を経験すると、
「検査対象になった=何か問題があるのでは?」
と少し身構えてしまうかもしれません。
しかし、モニタリング検査は、違反の可能性が高い食品だけを対象とする検査ではありません。
厚生労働省は、モニタリング検査について、違反の可能性が低い食品についても幅広く検査し、必要に応じて輸入時検査を強化するための制度と説明しています。
したがって、
「モニタリング検査の対象になった=自社の商品に問題がある」
とは考えなくて大丈夫です。
輸入食品を監視する仕組みの中で、一定の食品が計画的に検査されている、と考えると分かりやすいでしょう。
18.流れをまとめると
モニタリング検査は、
厚生労働省が年間計画に基づいて輸入食品を幅広く監視するために実施する行政検査
です。
輸入者として検査対象になった場合は、
① 検査対象・検査内容を確認
↓
② 貨物の所在・入庫予定・出荷予定を確認
↓
③ 検疫所・通関業者・倉庫で日程調整
↓
④ 食品衛生監視員による現物確認・検体収去
↓
⑤ 必要な期間、検査対象貨物を適切に管理
↓
⑥ 検査結果を確認
↓
⑦ 問題があれば検疫所の指示に従う
↓
⑧ 問題がなければ検査実績として社内記録を残す
という流れで考えると整理しやすいでしょう。
検査結果の判明を待たずに輸入できるのが、モニタリング検査の大きな特徴です。
ただし、実際の貨物について検疫所から具体的な保管・流通上の指示がある場合は、その指示に従います。
まとめ
食品輸入の実務では、「輸入届出を出して、届出済証をもらえば終わり」とは限りません。
モニタリング検査のように、輸入後の貨物について検疫所から確認や検体採取が行われることがあります。
輸入担当者は、
食品衛生法上の制度を知ること
だけでなく、
「検査が入ったら、自分は何を確認し、誰に連絡し、貨物をどう管理するか」
までイメージできるようにしておくことが重要です。
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