輸送保険について(5)。
輸送保険について
本日のテーマ
「保険付保をする際の留意事項とは?」
輸入者としての貨物海上保険の留意事項
「予定保険 ⇒ 確定保険」の順で申し込みを行う。
- FOB、CFR、FCA、CPT条件等の場合は、輸入者が自らの利益のために貨物海上保険を付保する(保険会社に輸入案件を示して保険料の見積りを取り、輸入契約ができたタイミングで予定保険を申し込みを行う)。
- 損害保険では、原則として危険の開始前に保険の申し込みが必要。
- 実務的には、実際に船積みされた時点で荷受人がその事実を知らないこともあり得るため、貨物海上保険では船積みの予定をあらかじめ保険会社に通知して予定保険を付保しておき、危険の開始後にそれを確定するという形を取る。
- 確定保険の申し込みに際しては、積載船名、出航日、確定数量などが必要。
- 輸入取引では、船積みが行われてからそれら通知を受けることより、危険が開始してから保険を申し込むことになるため、予定保険が必須とされる。
- CIF、CIP以外の条件での輸入に際しては、多くの場合、輸入通関時にCIF価格算出のため、税関より海上保険料請求書(Debit Note)の提示を求められる。
輸出者としての貨物海上保険の留意事項
自らのリスクをカバーするための「輸出FOB保険」がポイント。
- CIF、CIP条件などでの輸出では、輸出者が貨物海上保険を付保する。
- 輸出者は保険会社に輸出を予定する案件を示して保険料の見積を依頼し、CIF価格を算出。
- 輸出案件が成約し積載船名などが確定した段階で(確定)保険を申し込み、保険料を支払って保険証券を入手(どの条件で付保するかについては、売買契約および信用状で要求された条件に従う)。
- FOBやCFR条件での輸出では貨物が積載船の船上に置かれるまで、FCAやCPT条件での輸出ではコンテナ・ヤードへの搬入まで、輸入者にリスクが移転しない。つまり輸出者は倉庫内から船積みまでの間を、自らのリスクをカバーするために輸出FOB保険(内航貨物海上保険)を手配する必要がある。
- DAT、DAP、DDP条件の輸出の場合も、輸入者にリスクが移転するまでの間、自らのリスクをカバーするために、倉庫内から条件で定められた受渡し場所までの保険を付保しておく必要がある。
その他
1.包括保険
- 継続的に輸出入の予定がある場合は、予定保険を船積みごとではなく、取引すべてを包含する形で、包括予定保険を保険会社と契約することが可能。
2.保険料の後払い
- 一般の損害保険では、保険料支払後に保険が有効になる。
- 一方貨物海上保険では、保険会社との協議により一定期間の後払いが可能。
3.保険料率
- 貨物海上保険は自由料率。複数会社から見積りを取って比較することもできる。
- 特定のリスクが無事故で終わった場合は、あらかじめ高い料率で支払った保険料を、後で値引きするという条件で保険契約を結ぶことも可能(過去一定期間の事故実績に応じて将来の料率の引き下げを保険会社と交渉することもできる)。
4.保険料率が高い場合の「Owner’s Risk(保険契約者負担)」
- 危険率が高い貨物では、保険会社が保険の引受を行わなかったり、引き受けたとしても、保険料率が非常に高くなってしまう可能性がある。
- このような場合に、荷主が保険金額の一定割合を負担することで、できるだけ低い保険料率で保険を付保する方法があり、このような付加条件をOwner’s Risk(保険契約者負担)という。
(例:Owner’s Riskが20%の場合。保険会社は損害のうち80%を保険金として支払い、残り20%は保険契約者が負担する)
参考資料
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