関税率の種類について(2)。
特殊関税制度について
特殊関税制度とは
- 不公正な貿易取引や輸入の急増等の特別の事情がある場合に、貨物・供給者・供給国等を指定して、通常の関税のほかに割増関税を賦課することにより、国内産業を保護・救済するための制度の総称。
- わが国だけではなく、多くの国において国内産業を保護・救済するための制度として採用されている。
- 特殊関税発動の主要な要件や手続が定められ国際協定(WTO協定等)に準拠した制度(特殊関税制度が恣意的に運用されると、貿易取引を歪めることとなることから)。
特殊関税の種類
- 「相殺関税」輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対する税率
- 「不当廉売関税(ダンピング防止税)」輸出国内の販売価格等、正常価格より低い輸出価格(ダンピング価格)で販売された貨物の輸入に対する税率
- 「緊急関税」予想されなかった事情の変化により増加した輸入貨物に対する税率
- 「報復関税」ある国がわが国の輸出貨物などに対して差別的に不利益な取扱いをしている場合にその国からの輸入貨物に対する税率
相殺関税
概要
- 輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対し、国内産業保護のために補助金額の範囲内で割増関税を課す制度
- 世界の貿易自由化と貿易ルールの強化を目指すWTO(世界貿易機関)の協定においても、一定の規律の下に認められている
- わが国では関税定率法(第7条)に規定され、課税のための要件や手続等は、WTO協定及び第7条をはじめとする関係国内法令に基づく
課税要件
- 補助金を受けた貨物の輸入の事実があること
- 補助金を受けた貨物と同種の貨物を生産している国内産業(国内生産高の相当な割合を占める者)に実質的な損害等の事実があること
- 補助金を受けた貨物の輸入により、実質的な損害等が引き起こされたという因果関係があること
- 国内産業を保護する必要性があること
不当廉売関税
概要
- 正常価格(輸出国内の販売価格等)より低い輸出価格(ダンピング価格)で販売された貨物の輸入により、国内産業に損害等が生じる場合に、国内産業を保護するため、この輸入貨物に対して正常価格とダンピング価格の差額(=ダンピング・マージン)の範囲内で割増関税を課す制度
- 世界の貿易自由化と貿易ルールの強化を目指すWTO(世界貿易機関)の協定においても、一定の規律の下に認められている
- わが国では関税定率法(第8条)に規定され、課税のための要件や手続等は、WTO協定及び第8条をはじめとする関係国内法令に基づく
課税要件
- ダンピングされた貨物の輸入の事実があること
- ダンピングされた貨物と同種の貨物を生産している国内産業(国内生産高の相当な割合を占める者)に実質的な損害等の事実があること
- ダンピングされた貨物の輸入により、実質的な損害等が引き起こされたという因果関係があること
- 国内産業を保護する必要性があること
緊急関税
概要
- 輸入急増による国内産業への重大な損害の防止のために認められている緊急措置
- 同種貨物、競合貨物を生産する国内産業に生じた重大な損害等を防止、救済するために、内外価格差の範囲内で割増関税(緊急関税)を課すことが出来る制度
- わが国では関税定率法(第9条等)に規定され、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)第19条、WTOセーフガード協定に基づく
- 他国でセーフガード協定による措置がとられた場合、対抗措置(譲許の適用停止、又は課税価格以下の関税を課すこと)をとることが認められている
課税要件
- 予想されなかった事情の変化により、特定の種類の貨物の輸入増加があること
- 当該貨物の輸入の増加が本邦の産業に重大な損害を与え、又は与える恐れがあること
- 特定貨物の輸入増加により、重大な損害等が引き起こされたという因果関係があること
- 国民経済上緊急に必要があると認められること
報復関税
- WTO協定に基づき、わが国の利益を守りその目的を達成するため必要があると認められる場合、又はある国が、わが国の船舶、航空機、輸出貨物又は通過貨物に対して差別的に不利益な取扱いをしている場合において、指定された貨物の課税価格と同額以下で割増関税を課す制度
- わが国では関税定率法(第6条)に規定されている
- 原則として、WTOの承認を受けて割増関税が課されることとなる(=他の特殊関税(相殺関税又は不当廉売関税)のように、国内生産者から課税の申請を行うことはできない)
参考資料
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