EPA についてもっと知ろう(1)。

EPA についてもっと知ろう

 

本日のテーマ

「経過規定」と「特恵・関税還付申請」について

 

■経過規定とは
  • 各国の国内法によって、EPAFTA 発効の際の具体的な取り扱いを定めた規定のこと。

 

(日本の例)

  • 特恵税率の適用には、貨物の到着よりも、輸入申告を行う時期が重要なポイントとされる。

⇒ 関税定率法第4条:課税物件の確定の時期(関税を課する場合の基礎となる貨物の性質及び数量は、当該貨物の輸入申告の時における現況による)。

 

(ドイツの例)

  • EUEPA に基づく関税上の特恵待遇を与えられるか否かの決定は、協定の発効日に、輸出締約国から輸入締約国に輸送中であるもの又は輸入締約国において輸入税を納付することなく、税関の管理下EU 内の保税倉庫やフリーゾーンでの一時的な蔵置)にあるものについて適用することができるとする。

※産品の製造や発送の時点によらない。

当該協定の規定は、第三・二十九条に基づき、第三章の規定に適合する産品を指す。

  • ただし、協定の発効日から12ヵ月以内に輸入締約国の税関当局に対し、第三・十六条に規定する関税上の特恵待遇の要求が行われることを条件とする。

 

(TPP11 の例)

  • TPP11 発効の前に到着した貨物、保税地域に蔵置されている貨物であっても、輸入申告がTPP11 発効の日又はそれ以降に行われる貨物については、TPP 税率が適用できるとする。

※日EUEPA 特恵においても同じ。ただ同協定では、協定の発効の日から12ヵ月以内に特恵税率適用の要求を行う必要がある、とされる。

 

 

■特恵・関税還付申請とは
  • TPP11 における画期的な(!)規定。
  • (産品が特恵待遇を受ける資格があったことを前提として)輸入者がその輸入の時に、関税上の特恵待遇を要求しなかった場合、当該輸入者が輸入通関後に、特恵待遇及び超過して徴収された関税の還付を申請することができるとする規定のこと。

 

(条件)

  • 輸入の日の後1年以内、又は自国の法令で定めるこれよりも長い期間内に、以下を行うこと。

 

  1. 関税上の特恵待遇の要求を行うこと
  2. 当該輸入の時に、当該産品が原産品であった旨の申告を行うこと
  3. 原産地証明書の写しを提供すること
  4. 当該輸入締約国が要求する当該産品の輸入に関連するその他の書類を提供すること

 

その他ポイント
  • EUEPA では本規定が存在しない。しかし、EU においては、関税法例に当該規定が存在する=輸入通関後の特恵関税・還付申請を要求することができる!

⇒ 日本からEU に輸出する者、EU の輸入者にとっては大きなメリット。一方で、EU からの日本の輸入者は当該規定が適用できないため、日本とEU の輸入者の間で制度に起因するインバランスが生じることは否めない。

 

 

参考資料

メガEPA 原産地規則:日本関税協会

ドイツ税関による日 EU・EPA ガイダンス:ジェトロ